第169回国会は、越年となった臨時国会閉会3日後の平成20年1月18日に召集され、6月21日までの156日間に渡り開会されました。
国政をめぐる与野党の攻防
今国会は前年に引き続き衆参両院の多数会派が異なる所謂「ねじれ状態」であり、多くの場面で与野党の激しい攻防が行われました。
野党の抵抗戦術は国政の円滑な運営や国民生活を混乱させる理不尽なものであり、日本銀行総裁人事でも政府が提示した総裁候補は参議院において2回連続で拒否され、世界の金融市場が混乱する最中、約1週間にわたって総裁は空席になる事態が起きました。また、在日米軍駐留経費負担協定についても民主党は反対を表明するなど、国政の停滞を狙ったパフォーマンスともとれる行動が目立ちました。
75歳以上の高齢者医療費を定めた新制度が今年度よりスタートしました。この後期高齢者医療制度も、政府の説明不足等、批判に値する事情もあったと思いますが、民主党の過度に不安感を煽る行動により、冷静な議論が難しい状況が続いています。
民主党を中心とする野党は、今国会のほぼ全期間を通して参議院での「総理大臣問責決議案」の提出をちらつかせ続けました。しかし、なかなか提出のタイミングをつかめないまま、結局会期末の6月11日になってようやく問責決議案を提出・可決しました。背景には民主党の所属議員引き締めという党内事情があったといわれていますが、これにより国会会期は、参議院の外交防衛委員会で一度も審議されず放置されていた「日ASEAN経済連携協定」などの条約の自然成立を待つため1週間延長したものの、大きな混乱もなく閉会となりました。
今国会の最大の焦点となったのは、予算案および歳入法案はガソリン税を焦点とした「道路特定財源」の扱いでした。
予算案・歳入関連法案は、国民生活の混乱を回避すべく衆議院では速やかに可決したものの、民主党は「ガソリン値下げ隊」などの大衆迎合的パフォーマンスに走りました。両院議長による斡旋によって国会の混乱は一時的な収束を見ましたが、結局これも野党により反故にされ、参議院では2ヶ月もまともに審議もされずたなざらしにされました。
自民党内でも、若手議員を中心に、「道路特定財源は一般財源化すべき」との声が強く上がり、こうした声を受ける形で福田総理は「道路特定財源を廃止し21年度より一般財源化する」と記者会見で明言しました。私も参加している一般財源化を支持するグループは、一般財源化方針の実現のため現在も精力的に活動を続けています。
その後も野党の審議を忌避する姿勢は変わらず、衆議院で再可決されるまで1ヶ月間に渡り歳入欠陥が生じることとなりましたが、政府が一般財源化の方針を打ち出したことは、国政の大転換につながる英断だったと言えるでしょう。
重要法案の審議と内政
そのような状況においても、渡辺喜美行政改革担当大臣の粘り強い調整によって、「公務員制度改革基本法(6月6日成立)」の成立を見ました。
現行制度の下では、個々の公務員が自分の所属する府省への忠誠心を強く持ち、「省益あって国益なし」と言われる状況が続いていました。このような省益優先の縦割り行政の弊害は近年の複雑な社会情勢に対応できず、抜本的な改革が待たれていました。
日本の停滞を打破しスピーディなアクションを起こしていく上で必要不可欠な改革を、守旧派の強力な抵抗を乗り越えて実現した功績は注目されるべきだと考えます。これからの具体的な制度設計に向けて、一層の努力が必要になります。
国際水準並の宇宙利用を可能にする「宇宙基本法(議員立法:5月21日成立)」に関しては、自民党宇宙開発特別委員会衛星系政策小委員会の副主査として議論に参加しました。わが国は1969年の国会決議により国際条約による規制を大きく超える自己規制をかけてきたため、法整備が進まず技術的にも先進諸国に遅れをとってきました。本法の成立により、わが国の宇宙開発・利用が飛躍的に高まることが期待されています。
諸外国に遅れをとり始めたわが国の研究開発システムのボトルネックを除去し、わが国の技術革新を推進していくための「研究開発力強化法(議員立法:5月30日成立)」の成立にも立法作業チームの一員として取り組み、法制化を実現しました。
わが国の金融・資本市場も近年の国際競争に取り残され、東京市場のプレゼンスは年々低下してきました。こうした事態を打開するための「金融・資本市場競争力強化プラン」の第一弾として、「金融商品取引法等の一部改正案(6月6日成立)」の改正が実現しました。
また、依然としてあとをたたない振り込め詐欺による被害を防止し、捜査の突端を確保するための「携帯電話不正利用防止法(議員立法:6月11日成立)」の成立に際しては、自民党の「振り込め詐欺撲滅ワーキングチーム」の幹事として議論をリードしました。
その他にも、悪質商法の監視・摘発を徹底し被害者救済を容易とする「特定商取引法・割賦販売法」、閉ざされた少年事犯審判の遺族傍聴を認める「少年法」改正、世界的な取り組みであるCO2削減目標達成のための「地球温暖化対策法」、などが成立しました。
今国会では、政府提出法案80件のうち成立は63件、78.8%にとどまりました。成立率が70%台となるのはリクルート事件などに揺れた88年12月召集の通常国会以来となります。議員提出も含めた法案の成立数は77本でした。また「地域力再生機構法」「行政不服審査法」「基礎年金国庫負担引上法」「防衛省設置法」「児童福祉法」などの重要な法案が審議未了となり、次期国会に持ち越しとなりました。
今国会の会期中には、ミャンマーのサイクロン被害(5月4日)、中国四川省の震災(5月12日)、岩手宮城内陸地震(6月14日)など、大規模な自然災害が相次いで発生しました。また、2月には海上自衛隊のイージス艦「あたご」が漁船と衝突するという事故が起きました。航行中の勤務状況や緊急時の連絡体制など、多くの問題点が浮かび上がりました。私も安全保障委員会の委員としてこの問題に取り組み、防衛省と自衛隊内部の改革に尽力しました。
野党のパフォーマンス抵抗
外交面での大きな成果として、5月7日、胡錦濤国家主席が来日、福田総理との首脳会談で戦略的互恵関係の強化を確認し、東シナ海ガス田の日中境界線付近での共同開発の合意したことが挙げられるでしょう。
長年の両国最大の懸案が解決に向け前進したことは、停滞していた近年の日中関係において一つの転換点となりました。両国の国益が絡む領海線問題では双方の妥協が不可欠なため根強い批判の声もありますが、中国国内の強硬派を抑えて胡政権が日中関係改善に大きな一歩を踏み出した意義は大きく、福田外交の功績として評価されるべきだと思います。
しかし、昨年末から表面化した中国産の冷凍餃子からメタミドホスが検出され多数の健康被害が発生した事件や、3月14日に発生したチベットのラサでの暴動など、中国との関係ではまだ多くの課題が残されています。
また、本年はG8サミットで日本が議長国を務める年でもあります。7月7日の洞爺湖サミットに向け、1月25日、福田総理が「ダボス会議(世界経済フォーラム2008)」に出席、地球温暖化対策を訴えるなど、わが国がCO2削減の枠組み構築の議論をリードすべく努力しています。
5月に横浜で開催された「TICAD4(第4回アフリカ開発会議)」において、福田総理は40名にものぼるアフリカ諸国の国家元首と異例のリレー会談を行い、政府間や民間ベースでの開発援助について話し合いました。近年中国をはじめ諸外国がアフリカ諸国に対して資源外交を強めており、国連の安保理改革への礎であるアフリカは各国にとって非常に重要な地域でもあります。
5月30日、不発弾被害が問題となっているクラスター爆弾を禁止するオスロ・プロセスに合意しました。しかし、海岸線が長く国土面積の狭い日本の防衛にとって、クラスター弾は不可欠な装備であり、代替する装備品の調達は必須となります。保有するクラスター弾の処理費用200億円と、条約上容認される新型クラスター弾の購入費用が財政上の課題となります。
その他に、わが国に関係の深い各国のリーダーの交代が多くありました。
韓国では2月25日には韓国でイ・ミョンバク氏が大統領に就任、日韓相互の協力関係への新たな一歩を踏み出すことが期待されていますが、米国産牛肉輸入解禁を巡る対応で批判が巻き起こり、国内支持率の低下に悩まされています。
3月22日、台湾総統選挙で馬英九氏が選出。中国との歩み寄り路線を進める一方で、尖閣諸島問題など日本との政治問題には強気の対応を取る一面もあります。
5月8日、プーチン氏が首相となり、ロシアではメドベージェフ氏が新しく大統領に就任しました。プーチン氏の院政とも言われていますが、新大統領の指導力は未知数であり大国のリーダーとしてその動向に関心が集まっています。
第169回通常国会を終えて
今国会においても、いわゆる「衆参ねじれ」状態での国会運営の行き詰まりを感じる場面が多くありました。しかし、与野党の攻防の結果、今まで解決困難と思われていた課題や見過ごされてきた問題がクローズアップされ、解決に向けて大きく進み出したものもあります。政局ありきのなんでも反対ではなく、前向きで建設的な議論を戦わせるよう、与野党ともに一層の努力をしなくてはなりません。
これまで福田内閣は厳しい逆風にも耐え、着実に大きな成果を積み重ねてきてきました。惜しむらくは、これらの成果が内閣支持率につながっていないという恨みがありますが、秋の臨時国会においても重要な法案の審議が多く控えています。次期国会でも、安易な妥協や選挙目当ての不毛なパフォーマンスを排し、真に国益を考えた本質的な政策論を戦わせ、よりよい日本の未来のために努力して参りたいと思います。

